座談会 | 一橋大学のいま

小規模大学の強みを発揮し世界で評価されるオンリーワンの大学へ

杉山:今、大学をめぐる環境は大きな変革期にあります。国立大学の法人化や少子化の進行を背景に、国立大学も競争の時代を迎え、独自性を打ち出し強みをいっそう生かしていくことが必要とされます。卒業生の皆様や社会が一橋大学にどういう期待を持っているのか、つねに社会に向けてアンテナを張り、期待に応えていけるように心がけなければなりません。そこで、大学の将来について提言をお聞かせいただければと思います。

安田:早くからアジアに注目して積極的な交流を持ち、多くの留学生の受け入れを行ってきた一橋大学は、国際的な視点を持つ大学として優位性を持っています。日本のトップクラスの大学として存在するだけでなく、グローバルな視点で見てリーダーシップをとれる大学になることを期待しています。

杉山:本学の今後の方向性として4つのフロンティアを掲げているのですが、今ご意見をいただいたように「研究・教育のグローバル・ハブ」を柱のひとつに据えています。世界の教育・研究機関とネットワークを持つ大学になることをビジョンとしています。中央教育審議会では、大学の個性化を進めるために、指針となる7つの分類を行っています。その中にある「世界的な教育拠点および研究拠点」「高度専門職業人の養成」という方向性が本学に当たる分野かと思われます。

江頭:一橋大学基金「Frontier 4 Foundation」に謳われている"アジアNo.1、そして世界Only oneへ"は、とてもよいスローガンだと思います。大学の特色と可能性をよく言い当てています。持ち味をそのまま伸ばし、Only oneの教育機関となることには心から賛成します。

杉山:Only oneという目標のもと、大学全体が一体感をもってアクションを起こしているのですが、このような変革期にすみやかな対応が可能なのは、この規模だからこそです。学部の垣根もなく、フットワーク軽く行動ができ、理想の実現に向けて推進している実感があります。

永田:社会的に見ても、小規模でも実体と存在感がある企業に評価が集まる傾向があります。そういった企業は、国内より海外での評価が高かったレルます。一橋もそのようなタイプの組織として存在価値を発揮するのではないでしょうか。そのためには、大学ではぜひ学生たちにものを考えさせる場をたくさん提供して欲しいと思います。それも本質を問いかけるような深い考えが必要です。さらにその考えを、グローバルな視点で発展させることができる人材を育てて欲しいと思います。

永田雄志

永田雄志
昭和45年経卒
東洋エンジニアリング株式会社取締役会長

「社会的に見ても、小規模でも実体と存在感がある企業に評価が集まる傾向があります。一橋もそのようなタイプの組織として存在価値を発揮するのではないでしょうか」

杉山:21世紀は知識基盤社会といわれますが、知識は人と意見を交わし議論する中で生まれるものです。ゼミのような深くものを考える場は、大学教育の基本です。これにより大学の中で知識財が生まれます。本学のゼミは、社会科学の先端的な知識が生み出される源泉だと思っています。

「品格」を備えた真のリーダーの育成に期待

永田:大学組織だけでなく在学生には、社会に貢献する存在になってほしいと期待しています。学生時代にNGOやNPO活動に参加する機会を持ち、社会の隅々にまで眼を向けて欲しいと思います。例えば、欧米ではハンデキャップのある人が公共の場所で優先される社会規範が当然のものとなっていますが、日本では残念ながらこのような福祉の精神が育っていません。本来はそういったモラルは家庭で身につけることかもしませんが、社会のリーダーには謙虚な気持ちや感謝の気持ちが必要です。ぜひ社会に入る前に"心のトレーニング"を行ってほしいと願っています。

永田:私は卒業後36年が経つのですが、今、自分の中に何が残っているかというと、やはりゼミです。その時の仲間とは今でも会合を持ちますし、親交が途絶えることがありません。ゼミで得たもうひとつの財産は、自分の関心のあるテーマを深く学ぶという経験です。当時、私が所属した大川ゼミでは、先生ご自身が国鉄改革の委員を務められ、私達も一緒に研究させていただきました。それが後に私が仕事をしていく上で大きな財産になりました。そもそも私が一橋大学を志望した理由のひとつが、少人数で学べるということです。小規模の大学ならではの家庭的な雰囲気も守って欲しい特色のひとつです。経営という面から、少人数制の教育体制を貫く財政的な難しさは理解できますが、安易に学生数を増やせば大学のよさを失ってしまうでしょう。

江頭:私も一橋の卒業生には、各界のリーダーとして成長し、活躍して欲しいと願っています。「随所に主となる」の精神をもって、どうしたら仲間や組織、社会がより幸せになるのかを主体的に考え、尽くす心で何事にも取り組んでもらいたいと思います。それには、周囲を掌握しどう行動するかを考える力がいるのです。

永田:モラルを持たないと社会の根底から揺らぐのです。周囲に目を配ることは社会のリーダーの資質として重要な点ではないでしょうか。

安田:一橋の卒業生だから、このような振る舞いはしてはいけないという気概をもてればと思います。最近は「国家の品格」と言われるように、社会全体で「品格」「品性」が問われる時代になってきました。そのような時代にあって大学がどう社会に貢献することができるか、そのモデルを率先して示していただきたい。海外では入試で、学業だけでなく、ボランティア活動やスポーツヘの取り組みなどが評価されます。面接試験を行うのは難しいとしても、学業以外の部分でも優れた資質を持つ学生を積極的に評価して欲しいと思います。

杉山:入試方法も多様化の潮流にあります。アドミッション・オフィス方式などもありますが、実際の志望者の人数から考えると現実性が乏しい。ただ、人となりを総合的に見て、「品性」「品格」が重要であると、折に触れて教えることが必要だと思います。

杉山武彦学長

杉山武彦学長
昭和43年商卒